著者
内藤 輝
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.155-169, 2003-08-15

運動ニューロンの興奮性は、中枢からの命令や末梢からの情報により調節される。神経結合は、脊髄反射回路の一つであり、筋由来の低閾値求心性線維( I 群線維)からの興奮性(促通性)や抑制性の入力により運動ニューロン興奮性を調節する機構である。 近年、神経生理学的手法の進歩から、ヒト上肢筋神経結合の研究が報告されるようになり、動物前肢筋との違いが指摘されるようになってきた。本総説では、ヒトに対する神経結合の研究法、これまで明らかにされたヒト上肢筋神経結合、これら神経結合の機能的意義について、動物との比較を交えながら解説する。 キーワード:ヒト上肢筋、脊髄反射回路、筋求心性線維( I 群線維)、H 反射法“triggered ”PSTH 法 The excitability of motoneurons is modulated by central command and peripheral information. Neural connections are spinal reflex arcs, which modulate the excitability by excitatory and inhibitory inputs from low threshold muscle afferents (group I afferent fibers). Recent advance of neurophysiological techniques has enabled us to investigate the connections among muscles in the human upper limb. Several reports have indicated differences in the connections between the human upper limb and animal forelimb. This paper has reviewed the techniques for human studies, connections identified in humans, and functional significances of the connections. Also, comparisons of those between humans and animals have been briefly described. Key words : human upper limb muscles, spinal reflex arcs, muscle afferents (group I afferent fibers), H-reflex technique, triggered PSTH technique
著者
林田 昌子 清野 慶子 伊関 憲
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-62, 2011-08-15

キノコ中毒の多くは秋におこり、また集団発生することが特徴である。今回我々は山 で誤って採取したツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)により、家族4人が中毒に 陥った症例を経験したので報告する。【症例】(1)79才、男性 (2)76才、女性 (3)48才、女性 (4)15才、男性【現病歴】2009年9月某日、20時頃、母親が山で採ってきたキノコを味噌汁にして家族で 食べた。1時間30分後より嘔気、嘔吐が出現した。A病院受診し、4時間後に当院救急 部に紹介となった。持参したキノコの柄の根元に黒いシミがあることからツキヨタケと 判明した。【来院後経過】4名とも来院時バイタルサインは安定しており、検査上異常所見は認めら れなかった。嘔気・嘔吐が強かったためメトクロプラミド10mg静注、脱水に対して輸液 を施行した。その後経過観察のため入院となった。翌日には嘔気、嘔吐の症状が消失し、経 口摂取可能となった。その後、全身状態安定しており、退院となった。【考察】ツキヨタケの主毒成分はイルジンSである。これまでの報告では、ツキヨタケの 個体によって、イルジンSの重量当たり含有量は異なるとされている。このため、ツキ ヨタケ摂取量と症状は必ずしも相関しないこととなる。 ツキヨタケ中毒の症状としては摂取後30分~1時間より激しい嘔吐、下痢、腹痛がおこ る。重症例では著明な腸管の浮腫や肝機能障害がおこる。 中毒治療としては、毒物を除去するために、催吐、胃洗浄が行われることがある。また、 対症療法として、初期に十分な補液を行う必要がある。4症例とも来院時より細胞外液 の投与を行った。摂取量は異なっているが、発症時期や収束した時期はほぼ同じであっ た。ツキヨタケ中毒の治療は輸液管理が中心となるが、今回の症例も輸液を中心とした 対症療法で治療することができた。
著者
佐野町 友美 鈴木 修平 中村 翔 渡邊 千尋 熊西 亮介 中村 元治 鈴木 尚樹 渡邉 要 武田 弘幸 福井 忠久 吉岡 孝志
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-7, 2017-02-15

【背景】昨今、臨床実習の重要性が増す中で医学生の実習中の不適切言動や精神的な負荷が問題視され、検討課題とされている。がん患者を担当する場合、特に負荷が重いと推測されるが、学生から患者への説明などの実習における具体的な関わりや精神的負荷に関する検討はほとんどない。そこで今回、がん患者・医学生・医師の3者の視点から学生の説明内容の信頼性や精神的負荷へ焦点をあて検討を行った。【方法】2015年12月から約1か月間、本学においてがん患者実習経験のある学生、腫瘍内科医師並びに実習協力経験のあるがん患者へ連結不可能匿名化の質問紙法を用いて、がん患者へは実習時の説明とその説明への信頼等、学生へは患者との関わりや説明の内容等、精神的負荷等、医師へは学生の不適切言動や診療への影響等を中心に調査した。本研究は本学倫理審査委員会の承認を得て行った。【結果】学生43名、患者18名、医師9名から回答を得た。患者・医師からは守秘義務違反や無礼な行動などの不適切言動は指摘されなかった。学生が患者へ説明を行う場面は実際に存在(77%)し、学生は自身が発した情報を患者が信頼すると考えることが多い(78%)が、患者は学生が説明する内容をあまり信頼していない(p =0.022)という結果だった。患者の自由記載では学生の傾聴や応対への感謝が目立ち、医師の自由記載ではがん患者を担当することの重要性や難しさの指摘が目立った。学生の多くは実習で精神的負荷を感じ(66%)ており、精神的負荷を感じている学生は患者へ説明の経験があるという結果だった(p =0.018)。学生の自由記載の形態素解析では精神的な面に関連する単語の頻度が多く検出され、精神的に不安定ながん患者を担当する学生へは指導者は十分な配慮を行う必要性が示唆された。【結論】医学的説明を行う場面は学生には負荷となりうるが、患者の信頼は必ずしも高くなく、むしろ学生の傾聴や円滑なコミュニケーションが診療に有益である可能性が示された。
著者
斎藤 奨
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.79-94, 2004-02-16

1975年4月1日、山形大学医学部に寄生虫学講座の開設と同時に、私は本講座の助教授として就任し、2001年3月31日の定年退官までの26年間、寄生虫学の教育、研究に従事した。その間に、山形大学医学部附属病院を始め、山形県、宮城県、福島県の大学を含む医療関係機関から多くの寄生虫症の検査依頼があった。これらのうち、山形県でしばしば見られる蛔虫症、広節裂頭条虫症(日本海裂頭条虫症)、アニサキス症、ツツガムシ病、マダニ刺症、また症例は少ないが全国的に問題視されている輸入マラリアについて紹介し、さらに、山形県で発見されたMetagonimus miyataiおよびNanophyetusjaponensisの2新種と日本新記録種である旋毛虫の1 種Trichinella britovi のヒトへの感染の可能性についても考察した。最近の日本における寄生虫症はその重要性から日本臨床寄生虫学会が設立され、またインターネットを駆使して毎日のように医療関係機関の間で寄生虫症の問題点が討論されている。このように日本で終息傾向にあった寄生虫症がふたたび全国的に増加してきているので、現在はややもすると軽視されがちな寄生虫症の重要性を再認識し、常に念頭に置いて臨床活動を行う必要があることを喚起したい。 キーワード: 寄生虫、症例、新種、日本新記録種、山形県